堀谷アラハバキ神社

静岡県浜松市・堀谷アラハバキ神社 古代の神を探して

荒鎺山(堀谷アラハバキ神社)

〒434-0001 静岡県浜松市浜北区堀谷509 浜松SAから県道296号経由で約20分

日本、〒434-0001 静岡県浜松市浜北区堀谷

 アラハバキという名前がそのまま残されている神社は東北中心に分布しているが、東海地方にわずかに残るアラハバキ神社のひとつがこの堀谷アラハバキ神社だ。おそらく現在は荒神として祀られている神とアラハバキは同じ・もしくはどちらかから枝分かれした神だと考えられるが、大元だったであろう出雲では多くが客人神社・客神社という名前になっているか、そうでなければ大和朝廷が重視してきた神を祀るよう変えられている。

 アラハバキを祀る場所は磐座が特徴になっている。市内から県道296号沿いを北に向かっていくと左側に写真の鳥居が立っているが、元々の祭祀形態では道路右側にある大きな磐座も一体となっていて、かつては両方の石を渡すようにしめ縄がかけられていたのだという。鳥居側の磐座は木に囲まれていて写真ではわかりにくいが、かなりの大きさがある。

堀谷アラハバキ神社鳥居
堀谷アラハバキ神社

 先ほどアラハバキと荒神は元は同じだったのではないかと書いたが、元を辿れば久那戸神(岐神、クナト神)に繋がる。インドのドラヴィダ族の王だったクナトたちの一行は縄文時代に出雲に辿り着いたと言われる。妻は幸姫と言う名前だが瀬織津姫として祀られることが多く、この間に生まれたのが大和朝廷の神々の系列にも組み込まれた猿田彦命だ。ドラヴィダ族は龍蛇神を祀る人々で、現在でも 出雲大社北島國造館では神在月限定で龍蛇神のお守りを授与している。出雲大社摂社の出雲井社は岐神を祀る社で、背後には大きな磐座が鎮座している。その後出雲で崇敬を集めた素戔嗚尊が八岐大蛇を倒したという伝承は、元々の出雲族(出雲神族と言われることも)が新しい為政者に取って代わられたということなのだろう。

 アラハバキは塞の神とも言われる。塞の神は地域に穢れたものや悪いエネルギーを入れない働きがあるとされるが、視点を変えて見れば外界とその地域を繋ぐ役割を持った場所だとも言えるのではないだろうか。好ましいものとは手を繋げる場所、外から入っていこうとするものにとっては試される場所なのではないかと思う。

堀谷アラハバキ神社
堀谷アラハバキ神社正面

 ここを尋ねたのはミシャグジ神を調べていた関係で、ミシャグジ様は石神(シャクジ)だと考えた場合、諏訪の形式とは異なった形…磐座を祀っていた場所もあるのではないかという確認だった。「ミシャグジ」として祀られるエネルギーは古代祭祀の場でよくある、強く広がりを持った雑多な、と言うよりは全てを含んだものだと感じられる。ここはアラハバキという名前だが、やはり多くを含む、より”1″に近いエネルギーの場所で、おそらく好き嫌いがはっきり分かれる場所だと思う。

 私が祈り(というか自己紹介に近いような挨拶)をし終わった瞬間、連れが「きみ何を呼んだ!?」と怯えたのでどうしたのかと思ったら、ものすごく強いケモノ臭が漂ってきたのだそうだ。私は長年の花粉症で鼻がほぼ効かないのでわからなかったが、本物の熊か何かがいるのかと思ったほどの匂いだったらしい。それを聞いて私がうれしかったのは、やっぱりミシャグジとアラハバキは同質の神なんだと認識したこと、古代祭祀は人も動植物も自然も全てを神と見なしてきたんだなと思えたことだった。山に入って磐座を探したりしていると、野生の鹿や猪や狸、雉やイタチなどいろいろな動物たちと突然出くわすこともあるのだが(おそらく熊がかなり近くまで来ていたこともある)、古代の私たちと動物たちはもっと近い存在だったのだろうと思う。

堀谷アラハバキ神社磐座
堀谷アラハバキ神社道路右側
堀谷アラハバキ神社磐座

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