荒覇吐磐座

岩手県奥州市・磐神社 まつろわぬアラハバキの磐座

磐神社

〒029-4384 岩手県奥州市衣川区石神99
      JR東北本線前沢駅から車で約40分

ご祭神

荒覇吐(アラハバキ)神として安倍氏が祀っていた
女石と陰陽で日本武尊、稲葉姫命を祀るとされる

日本、〒029-4384 岩手県奥州市衣川区石神99

 中尊寺から10分ほど、細い県道を走って田んぼに囲まれたエリアに入った先に突然現れる通称「お石さま」。田んぼの真ん中にあるので奥州市の方から行くなら細い道に入ってから右側を見ておけばいい。山や田んぼの緑の中に現れる朱色は社殿の屋根と由来を書いた看板の色で、その間に石の鳥居が見えてくる。

磐神社への道
磐神社・遠景
磐神社・参道

 鳥居の先にいる狛犬…犬というより狒々のような姿だが…はとても愛らしい。

磐神社・由来
磐神社・社殿
磐神社狛犬

 社殿の裏手に回ると、荒覇吐神の磐座がある。神武東征で敗れた長髄彦が東北に辿り着いて祀ったとされる荒覇吐は謎の多い神だと言われるが、おそらくは島根で信仰が始まり、長野を経由して現在も東北のエリアで祀られている。大宮氷川神社などで「客人神」として祀られているのが荒覇吐で、蝦夷の神と言われていることを考えると大和朝廷以前の古い神…出雲系か石見系か、いずれにしても物部氏も祀っていた神だろう。

 アラハバキという音については中東から来たのではないかという説がある。インドにはアラーハーバードという地名があるが、これは”إلٰه ‌آباد”というペルシャ語から来ていて、一神教の神という意味ではない概念的な”神”の都市という意味だ。北インドのムガル帝国王だったアクバルが提唱した「ディーネ・イラーヒー」、イスラム教の社会の中でイスラム教だけでなくキリスト教・ゾロアスター教などを包括した思想に基づいて名づけられた名前だ。社殿に祀られる存在ではなく自然の中に在った時代の神であろう荒覇吐と、イスラム社会に生きながら一神教を超えた概念をまとめたアクバルによるアラーハーバード。古代日本と古代インド、そして現在を繋いでいる思想には真実の欠片が含まれているように思う。

 懐の深さを表す名前がつけられた荒覇吐の磐座は、その見た目に反してとても柔らかく広がるエネルギーを持つ。

荒覇吐磐座・社殿側から
荒覇吐磐座・田んぼ側から
荒覇吐磐座

 磐神社の磐座は男石大明神とされ、近くにある松山寺内の女石神社にある磐座と対になっている。伝承では男石(日本武尊)が女石(稲葉姫命)のところに通っていたという。これは大物主神と倭迹迹日百襲姫(ヤマトトトヒモモソヒメ)の伝承やゼウスと女神たちの伝説を想起させる。男石と女石は、この地でどんな「神の子供たち」を生み出してきたのだろうか。

磐神社・山神などの石碑

 境内には石碑が立っていて、山神、庚申塔、金華山、雷神などの文字が読み取れた。

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