サッカラ・テティのピラミッド

神さまと人間③ 神≒人間の証明

 古代エジプトではまず宇宙の海、nn(ヌン)と呼ばれる混沌があった。nnは男性性として表されるnnと女性性として表されるnwnt(ヌウネト)が合わさったもので、総合的にnnと呼ばれる。ここには「何もなくて全てがある」。これは最近になって量子物理学が見出した「無」と同じだ。仏教で言えば「空」になるし、スピリチュアルならゼロポイントになるだろう。

 この宇宙の海に、あるとき意識が生まれた。エネルギーの凝縮、収縮という重力による作用で顕れたこの意識は’Itm(アタム、アトゥム)と呼ばれる。’Itmは秩序を持ったエネルギー母体であり、nnからのエネルギーを秩序に従って放出する「完全なる者」とされる。’Itmは全てのものの属性=名前によって表されるものの集合体であり限定できないため、これ以降に生まれる神々は全て’Itmの一側面を表したもの、つまり「機能や原理、生命力のひとつの表現」を現している。古代エジプトの神々は「神」と呼ばれはするものの、何らかの働き=原理を表した存在なのだ。’Itmの誕生によって、ここで無=0は1になり、0=1の式が成り立つ。

 これが創造の始まりとされ、外側へ向かう力=宇宙の膨張、排出として描かれる。これはビッグバンを指していると考えられる。’Itmは動くために自らの分身ra(ラー)として「現れた」。どこに現れたかは描かれていないが、raが創造神としての役割を持っている以上、地球に現れたと考えればいい。つまり、ra以前の’Itm、nn(とnwnt)は地球創造以前の話、スピリチュアルの概念からすれば宇宙的な存在だということになる。raは’Itmの分身として、Nnからのエネルギー…おそらくは宇宙的なエネルギーを宇宙の秩序に従って放出する存在だ。raは’Itmの分身だから、0=1=1が成り立つことになる。

 このあとraは同じように「分身として」、男性として表される大気の原理šw(シュー)と女性として表される火の原理tfnwt(テフネト)を生み出す。彼らは’Itm=raから「分裂して生成された」。地球上に於いては三柱の神が誕生したことになるが、1=2となる。ここから神々=原理は「子」として生み出されていく。これ以降は人間の生殖と同じように、親の中にある男性性と女性性を使って生み出されることになる。生物学みたいになってしまうが、1柱の神の中には男親の中にある男性性と女性性、女親の中にある男性性と女性性を持って生まれることになり、誕生に当たっては4つの要素をすでに含んでいることになるのだ。

 šwとtfnwtはgb(ゲブ)とnwt(ヌウト)、それぞれ大地と天空の原理もしくは神という子供を生む。そしてこの二柱の神は夫婦となり、ast(イシス)、wsir(オシリス)、nbt-hwt(ネフティス)、sth(セト)の四兄妹を生む。カイロ博物館にあるペタモンのコフィン・テキストで「私は2に変わる1 私は4に変わる2 私は8に変わる4 そのあと私は1」という数学について描かれたものがあるが、創造はまさにこの通り行われたのだ。

0=1=1=2=2=4… nn=Atm=rA=shw+tfnwt=gb+nwt=ast+wsir+nbt-hwt+sth

0=2=2=4=8=16… 神々の結合した男性性と女性性の数はこうなる。

 そして1つの個を表そうとしたとき、式には累乗が現れ、0=1=1=(1/2+1/2)+(1/2²+1/2² )+(1/2³+1/2³) …(1/∞+1/∞)となる。(1/2+1/2)はšwとtfnwtを生み出すためにraが自身を分裂させたことを表す。次の(1/2²+1/2² )はgbとnwtを生み出すためにšwとtfnwtが使ったraの原理を表す。(1/2³+1/2³)も同様に、gbとnwtが使ったraの原理の数になる。最後の1/∞のペアが表すものは、量子物理学の「計測することもできない、ただ存在することだけがわかっているもの」だ。

テーベ・王家の谷KV14 タウセルト女王・セトナクト王墓

 人間は1つの受精卵から分裂して一人の人間となるため、その細胞の数に合うペアがこの式の途中に出てくる私たち人間を表していることになる。式を右に進んでいくと私たちの体の中にある細胞のひとつに、さらに進めば染色体や核になり、原子に分解され、量子にまで進み、最終的に計測できないnnの中の材料にまで還元される。これが私たち人間の、もっと言えば地球の成り立ちだ。

 だが、ビッグバンから拡大する流れとは逆に、古代エジプトにはビッグクランチ(=収縮)という概念があった。「創造されたものはすべてnnに戻るだろう。私だけが誰にも知られず、誰にも見られず1人存続する」というraの言葉が残されている。変な話になるが、ヒエログリフでいろんな人の運命について読んでいたある日の明け方、私はjhwtj(トート)に「逆からの視点が必要だ」と言われた。しばらく頭の中で???が躍ったあと、今のはたぶんヒントをくれたんだ!と思い、朝5時過ぎにベッドから飛び起きて、逆算しようとした。だが…「∞はほかのどんな数よりも大きい数を表す」。つまり∞-1=∞、∞-1000000=∞。どんな数を引いたとしても、答えは∞にしかならない。逆算しようとしたとき、先ほど書いた全ての数字は∞になってしまうのだ。0=∞、1=∞、1/2³=∞…最初にあった宇宙の海も、ラーも、イシスも、式の途中で現れるはずの私たち人間を表す数字も全部∞でイコールになる。ああ、私たちはやっぱり神とイコールになり得る存在なんじゃないか!そして、ネフェルタリの墓に刻まれた「オシリスはラーのうちにとどまる ラーはオシリスのうちにとどまる」という言葉。オシリスはすべての人間の神性を表す、ある意味で人間代表だ。そして創造神ラー。私たち人間の中に神は在り、神の中にあるという入れ子構造…パラドックスはなかなか見えにくい。

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