月山神社本宮

山形県庄内町・月山神社本宮 死と蘇りの山

月山神社本宮

〒990-6609 山形県東田川郡庄内町立谷沢 字本澤31
      JR羽越本線 鶴岡駅からバスで約2時間
      月山リフト利用ルートでリフト上駅から山頂まで約3時間半
開山期間:7月1日〜9月15日 参拝の際には祓料500円が必要。
ルート:
初級者向け
①志津(リフト)口コース 所要時間約3時間半
  姥沢駐車場に車を止めてリフト下駅からペアリフトを利用。
  リフト料金は大人往復1,100円 片道600円。
  4月上旬〜10月下旬 8:00〜16:30
  月山観光開発株式会社 TEL 0237-75-2025(受付時間17:30まで)
②羽黒山口コース 所要時間約3時間
  月山八合目駐車場から御田原参篭所、弥陀ヶ原を経て山頂
  距離はあるが傾斜が緩めのコース
中級者向け
③湯殿山口コース 所要時間約3時間半
  湯殿山神社から月光坂、浄身川を経て金姥で志津口コースと合流
  月光坂の高低差は250mあり、鉄はしごが三箇所ある
④志津(姥沢小屋裏)口コース 所要時間約3時間
 姥沢駐車場に車を止めてリフトを使わずに登山するコース
 牛首で湯殿山口コースと合流
そのほか上級向けや長距離など多種多彩なルートがあり、
月山ビジターセンターのサイト(https://gassan.jp/)で確認できる。

ご祭神

月読命
室町時代までは八幡大菩薩(誉田別命・ほんだわけのみこと)
阿弥陀如来が月山の本地仏とされる

日本、〒990-6609 山形県東田川郡庄内町立谷沢 字本澤31

 修験の山として知られる出羽三山の一つ、月山。頂上まではいろいろなルートがあるが、比較的登りやすいのはリフトを使う志津口コースか、美しい弥陀ヶ原湿原を通る羽黒山口ルートになる。地元の人たちはするすると登っていくが、山登りに慣れていない人は記載の所要時間より多めに時間を見ておいたほうがいい。

 志津口コースは途中で岩を登るような場所があり、時期によっては雪渓を渡ることになる。着脱は面倒だが、開山から間もない時期はリフト下駅でアイゼンをレンタルしておくと安心だ。

 593年に崇峻天皇の第3皇子である蜂子皇子によって開かれたとされる。明治の廃仏毀釈によって多くの寺が破壊されたが、出羽三山は神社となってその姿を残し、平安時代から続いてきたと言われる修験の山として信仰を集めている。出羽三山では蜂子皇子が出羽三山を開いたのが丑歳丑日だったということで、丑年を三山の縁年とし、この年に参拝すると12年分のご利益があるとしている。2021年は丑年だったが、丑の日のみ三山で「丑の日御守り」・湯殿山神社では特別ご朱印が頒布されたり、出羽三山神社では蜂子皇子を祀る天宥社で御尊像参拝が行われたりしていた。

 この出羽三山では「三関三渡(さんかんさんど)」という考え方があり、羽黒山が現在(正観世音菩薩=観音浄土)を、月山が死(阿弥陀如来=阿弥陀浄土)を、湯殿山が再生(大日如来=寂光浄土)とされる。初めて出羽三山全部を回ろうとしたとき、先に月山に行ってから羽黒山という順序にしてしまってえらい目に遭った。月山に行ってからは食事をしようと思っても店が開いていなかったり、お金を下ろしたいのにATMがなかったりして、連れと2人で「間違えたな…」と言っていたのだが、次の日に湯殿山神社の参拝を終えたら体の重さが取れただけでなく、たまたま入った道の駅で「ここにこんな美味しいものがあったのか!」という食事に出くわし、そこでお互いの財布がきれいにゼロになったと思ったら今度はまだ残っていたはずのガソリンの警告ランプが点灯した。何から何まで一度すっからかんになったのだ。近くのコンビニエンスストアでお金を下ろし、これもすぐ近くにあったスタンドでガソリンを満タンにしたとき、私たちはどちらからともなく「生き返ったってことだねえ」と言った。

月山リフト下駅
月山登山道案内図
月山リフト

 リフトを降りてから山頂付近までは木の歩道が整備されていて歩きやすい。雪渓が出て来るまでの道には小さな川があったりして、山ならではの景色を楽しむことができる。

月山登山道・標識
月山登山道
月山・牛首からの風景

 私たちが行った時期は、牛首を過ぎた辺りから岩と雪渓が現れてきた。それまであった木製の道の上に雪がかぶっているので、先がわからなくならないよう目印のロープが張られている。ただ雪が積もっているだけなら楽なのだが、ルートを示すロープ付近や日の当たる場所では雪を踏むとぼこっと穴が開いて、足が落ちてしまう。その下に水が流れていたりすることもあって、膝から下は濡れた状態のまま登っていった。

月山・雪渓
月山・雪渓
月山・雪渓の注意看板
月山・ガレ場
月山・山頂付近
月山・鍛冶稲荷神社

 山頂付近には鍛冶稲荷神社と延命地蔵尊が祀られている。雪渓があまりにも怖かったので、「延命地蔵尊」という名前を見たときは真剣に「下まで無事に戻れますように…」と手を合わせてしまった。ここから左に折れたら、しばらく登りやすい石が敷かれた山道になる。あとは月山の写真でよく見る、長い急な石段を上がっていくだけだ。

延命地蔵尊
月山神社
月山神社本宮

 ここから先は写真撮影禁止となるが、本宮の狛犬は獅子ではなく兎だ。羽黒山ルートにある御田原神社で祀られているのは櫛名田比売、素戔男尊の妻である。月山という名前と前世や死、蘇りという意味から月読命が祀られているのだと思うが、妻である櫛名田比売を祀っていながら、月山には素戔男尊が祀られていない。

 月山は庄内平野から見ると牛が寝そべったような形に見えることから、別名を臥牛山という。先ほど書いたように、出羽三山では丑年をとても大切にしている。神仏習合の神で牛頭天王は素戔男尊の本地とされるし、ヒンドゥー教では牛は聖なる動物とされ、素戔男尊との類似点が多いシヴァ神が乗っている…。

 かつて西の伊勢、東の出羽と言われて人気だったと言うが、出羽三山の中で天照大神を祀っている境内社は下居社しかなく、それもイザナギ・イザナミなどと共に祭神とされていて単独ではない。伊勢神宮周辺ではエリア内に天照大神=太陽に対して月読宮=月が祀られるという対の形式になっているが、伊勢神宮で素戔男尊は祀られていない。対して出羽三山付近では素戔男尊を祀る八坂神社はもちろん、廃仏毀釈以前から素戔男尊と同体とされる牛頭天王を祀っていた寺が多々ある。

 月山で祀られている月読命は、本当に伊勢の系譜と同じ月読なのだろうか?もっと言えば、天照大神という女性としての神がクローズアップされる以前…大和朝廷成立後から持統天皇治世以前の古代、月読命に比定される存在は本当にいたのだろうか?牛頭天王の写真には月輪と十字架のように見える剣を持ち、人の頭と同じ大きさで牛の頭を持ったものがある。これは何を意味するのか。少なくとも、場所が変われば同じ名前の神が違うイメージで祀られているのは確かだろう。

関連記事一覧